導入事例

Case

船井ファストシステムを
導入いただいている企業様へのインタビュー

kintoneと勤怠システムを連携させることで、案件管理とスムーズな工数管理を実現。従業員の原価意識が上がったことで、利益率が3倍になった事例

公開日:2024年01月09日
About 土地家屋調査士法人きざし
株式会社ジャイロおおいた 様

大分県大分市の土地家屋調査士法人。2002年に開業し、2012年に法人化。 測量をはじめ、土地・建物の登記の業務を取り扱っている。 2019年からkintoneを導入。徹底した経営戦略でシェア100%を達成し、高い生産性も達成。 今回は代表の三宮浩輝氏に詳しくお話を伺った。

kintone導入前の課題、導入を決めた理由を教えてください

三宮様

kintone導入前は、Excelで案件やスケジュールの管理をしていましたが、従業員が増えていく中で情報の抜け漏れがあったり、各自で管理しているスケジュールが間違っていたり、入力に関しての課題がありました。

Excelで案件を管理している頃から「将来的には工程管理や工数管理も行いたい」と考えていたのですが、Excelでは案件の進捗管理までしかできなかったため、やはり現在の管理方法では限界があると感じ、システム導入を検討しました。 そんな時に船井さんにkintoneを紹介していただき、最初は工程管理をkintoneで実現させたいと思い導入を決めました。しかし、あとでお話ししますが、なかなかその部分に関しては浸透しなかったため、現在は案件管理と工数管理を徹底して行っています。

kintone導入時に行った取り組みを教えてください

三宮様

導入当初は毎週「kintone委員会」という会議を設けていました。毎週会議をして、改善点があれば僕が船井さんに聞きながらkintoneのカスタマイズをしていたのですが、重要な工程管理の運用がうまく浸透しませんでした。

弊所では同時並行の案件数が100以上と非常に多く案件を抱えており、案件に紐づく工程管理をガントチャート形式で行うには少し見にくくなってしまうため、結局適切な管理が行えないことが原因でした。アウトプットのイメージが湧かないと中々入力も進まないので、別の管理方法はないかと考えるようになりました。

kintoneで管理をしていきたい!とはずっと思っていましたので、まずは工程管理より先に所内にkintoneへの入力浸透させることを目標にしました。「どうしたらkintoneに入力をしてくれるだろうか?」と考えた結果、kincone(※)を導入しkintoneとタイムカードと紐づけをすることで、kintoneに入力しないと給料がもらえないという状況を作りました。

※kinconeとは?(https://www.kincone.com/
株式会社ソウルウェアが提供する勤怠管理・交通費清算クラウドシステムです。kintoneと連携することで、出勤・退勤時刻や交通費等の情報をkintoneに集約することが出来ます。

三宮様

kinconeとkintoneを紐づけた当初は、もちろん入力ミスや打刻ミスなどもありましたが、慣れてくると社員全員が普通に入力出来るようになり、現在では出勤時間と退勤時間の打刻時間と、工数管理の紐づけが出来るようになっています。勤務開始時刻から終了時刻まで「どの案件に何分割いているのか」が正確に管理できるので、案件ごとの工数の見える化ができるようになっていますし、kinconeで打刻した時間を元に給料計算もしています。

kintoneに入力をしないと給料がもらえないという状況を作ったことで、kintoneへの入力が着々と進み、結果として社内への浸透に成功したのだと思います。本日、このインタビュー前に社員何人かに現在のkintoneの利用方法についてのヒアリングをしましたが、kintoneへの入力自体も全然負担感はないそうです。

kintoneを導入してどのような効果がありましたか?

三宮様

コロナの影響もありますが、この2年で利益率が3倍ほど向上しました。
工数管理による業務効率化と単価アップの二軸で、業績向上に繋がったと思います。

インタビュアー

ありがとうございます。どのようにkintoneをご活用いただいているか詳しくお伺い出来ますでしょうか。

三宮様

kintoneでは主に案件管理と工数管理を徹底しています。
「kintoneさえ見れば仕事を進められる」という状態にしたかったので、両アプリとも入力のハードルを下げることを意識してアプリをカスタマイズしています。
まず案件管理アプリには、案件の基本的な情報を入力していますが、誰もが入力しやすいアプリにするための工夫をしました。

一つ目は、入力項目を絞ったことです。案件に紐づく情報はたくさんありますが、全てを入力しようとすると時間もかかりますし、思うように入力が進まないこともあります。そこで入力項目を必要最低限に絞ることで、案件管理アプリへの入力ハードルを下げられると考えました。

二つ目は、入力が必要な項目を画面上部に表示したことです。フィールドの配置場所を移動するだけで、必要な情報がどこにあるか分かりやすくなりますし、入力もしやすくなりました。

※案件管理アプリの入力画面。案件に関わる特に重要な項目を、画面上部に集約している。
三宮様

入力箇所が多かったり分かりづらかったりすると入力することが目的になってしまうことが多いですが、この二点を行うことで入力するためのフィールドを探す手間が一気に省けて本来の目的である案件管理が正確にできるので、とてもおすすめです。

具体的に画面上部に表示している入力項目は、案件番号・受託日・完了予定日・受託額。後は仕掛状況と案件名などですね。

他にも、社内担当者や依頼主、依頼主の会社担当者等を入力するようにしていますが、必要最低限の項目に入力が出来れば、毎月どのくらいの売上が計上される予定なのか、グラフ上ですぐに確認できるようになっています。

※案件管理アプリの月別売上予定のグラフ。完了予定日を基準に、計上される予定の売上を確認できる。
インタビュアー

入力のハードルを高めないために、入力項目を必要最低限に絞られているのですね。たくさん入れてもらいたい気持ちが出てしまうところですが、入力してもらわないと意味がないので、絞るのは大切ですよね。続いて工数管理アプリでは、何をどこまで管理されているかをお伺い出来ますでしょうか?

三宮様

はい。
工数管理を行うために使用しているアプリは主に3つあります。

一つ目は、先にご紹介した案件管理アプリ。二つ目はkinconeアプリ。そして三つ目が工数管理アプリです。

工数管理を行う上では「どの案件を何時から何時まで行ったのか」という情報が必要です。この情報は工数管理アプリで入力しますが、出勤時刻・退勤時刻の反映はkinconeアプリから、案件の情報は案件管理アプリからそれぞれ情報を参照しています。

まず、kinconeと連携をしているkinconeアプリは下記のようになっています。kincone上で打刻をすると、出勤時刻・退勤時刻・休憩開始時刻・休憩終了時刻に、打刻した時間が自動で取り込まれるようになっています。

※kinconeアプリ(打刻記録)の画面。一覧画面に表示されるボタンを、出勤時・休憩開始時・休憩終了時・退勤時に打刻すると、
その履歴が1日1レコードとして作成される。
三宮様

続いては、工数管理アプリの入力画面です。

入力画面では、取り掛かる業務ごとにテーブルの行が追加される仕組みになっています。次の業務に行く場合は「次の業務」を押すと、テーブル行が追加されるため、そこで取り掛かる業務を選択します。その際に案件に紐づけることで、案件ごとの工数管理もできるようになっています。

「次の業務」のボタンを押した時間が、自動で終了日時と次の開始日時に反映されるので、毎回日時を選択する必要もありません。

※工数管理アプリの入力画面。「次の業務」を押すと、押した時間が「終了日時」と次の行の「開始日時」に自動で反映される仕組みになっている。
三宮様

測量現場には基本的に二人で行くので、隙間時間や移動時間を使って入力をすれば、ほぼ入力に費やす時間は掛かりません。パソコンからでもスマホからでも入力が出来るので、現場間の移動中の隙間時間に入力することも出来ますし、一日の終わりに日報のような感覚で入力することも出来ます。

1日の終わりには、1人1レコードで下記のようなレコードが出来ます。これで「誰が・どの案件に対して・何分かけて・何をした」というところが全て取れるようになります。

このデータが溜まることで案件ごとに掛かっている時間を算出でき、工数管理が出来るようになります。

工数管理アプリにレコードを登録する時間としては、おそらく1日5分も使っていないので、負担なく使えています。

※工数管理アプリの画面。1日の動きが全て記録出来る。
インタビュアー

ありがとうございます。
現在は案件管理アプリと工数管理アプリをメインでお使いいただいていますが、弊社が提供している土地家屋調査士事務所様向けのkintone「船井ファストシステムfor土地家屋調査士」には、案件管理のほかに案件に紐づくTODOや工程管理をするための「ガントチャート」アプリがあると思いますが、浸透が中々されなかった背景を詳しくお伺いできますでしょうか?

※ガントチャートアプリの画面例
三宮様

冒頭でも述べた通り、同時進行の案件が100件以上あったため、ガントチャート形式の表示では少し見にくいと感じていました。

工程管理がきっかけでkintoneを導入しましたので、ガントチャートをうまく活用していくためにはどうしたらいいか?とも考えたのですが、思い切ってガントチャートは使わずに案件管理アプリと工数管理アプリのみを利用することにしました。
案件の基本的な情報と、それに紐づく社員の工数や勤怠の情報まで記録出来るようになったので、結果として当初目標としていた「kintoneさえ見れば仕事を進められる」という状態が出来ました。

アプリパックに含まれるアプリを全て使わなければならない、ということではありませんので、自社にあったアプリを使うことが重要だと感じましたね。

インタビュアー

おっしゃる通り、自社にあったアプリの精査は非常に重要ですね。そして、それができるのもkintoneの魅力だと思ってますので、我々のサポートもお客様にあった提案をするように心がけておりますが、今後も注力していきたいと思います。kintoneとkincone以外にもご利用のサービス等はございますか?

三宮様

現在主に使用しているのはkintoneとkincone、メッセージのやりとりはチャットワークで行っています。以前はほかにもシステムを入れていたのですが、無くてもどうにかなるものは自然と淘汰され、使用しなくなりました。

インタビュアー

ありがとうございます。
続いて、これまでの業績向上のために社内で取り組んだことなどがあれば、詳しくお伺い出来ますでしょうか。

三宮様

社員が「利益に対する意識」を持つ為の仕組みを考えました。

原価や工数等をイメージする上で必要な数値を「見える化」するための仕組みをkintone上で実現した、ということです。利益を確保するためには、単価を上げるか原価を下げるかのどちらかの動きが必要不可欠になるので、まずは社員ひとりひとりが、現場当たりの原価をイメージ出来るようになることが重要だと考えました。

一つの案件に多くの社員が関わるので、原価を下げるためには、個人の効率アップを考えるのではなく全体的な効率を上げる必要があるのです。
そこで、現場当たりの原価をイメージしやすくするために、弊所独自で「実質の給料は受注額の55%」という労働分配率を設定しました。

例えば、100万円の案件を受注したら55万円が実行予算になるわけですが、55万円の予算に対し、45万円しか使わなかったとすると、10万円はみんなで分けられる予算になるのです。

この独自の労働分配率の設定と工数管理を掛け合わせることで、各個人が原価に対して「どの案件のどの工程にどのくらいの工数が掛かっている」という意識が出来るようになり、原価に対する意識が大きく変わったように思います。効率化を意識することで原価を重視した仕事の割り振りも出来るようになりました。

例えば忘れ物に対しては、忘れ物を取りに戻るために掛かる往復の時間、原価まで考えられるようになりましたね。

事務所から車で30分程度の現場で、事務所に忘れ物をしてしまい、忘れ物をとり一度事務所に戻るとなると、往復1時間×2人分の原価がかかってしまう、というような考え方が出来るようになりました。

特に移動時間は原価のかかる率が大きいので、長い目で見ると非常に大きな差になります。

また、原価を重視した仕事の割り振りについては、ベテラン社員になると給料は上がっていきますが、同じ質・時間をかけているだけでは会社としての利益は減ってしまいます。

ですので、ベテラン同士が「自分と仲の良い人と測量に行こう」というよりは、新人教育の面も含めて「自分と新人で行こう」という意識を持てるようになって欲しいと考えました。

工数管理が出来るようになると、数値が「見える化」してくるので「給料の高いベテラン同士が簡単な測量に行くのは原価的にもったいない」という考え方が出来るようになりました。 さらに、単価を上げるために「新しくこのような勉強をしよう」という意識も持てるようになったと思います。ひとりひとりの考え方や意識が変わったことで、会社全体としての効率が大きく変わりました。

インタビュアー

ありがとうございます。

新人教育に対する意識も変わったということですが、詳しく教えていただいてもよろしいでしょうか。

三宮様

教育体制を充実させるために、ベテラン・新人を混ぜたグループ制を設け、グループごとに原価集計をする仕組みを作りました。

敷地調査等のフロント商品だと原価率が110%というものもあるのですが、多少は赤字になってしまってでも、そのあとの契約や数値を取るための重要な商品になるため、仕組み作りが重要になります。先にも述べましたが、弊所では労働分配率が決まっており、案件の受注額が個人の給料に反映されるため、まずは会社として原価を抑えるための教育体制を設けることが重要だと考えました。

新人を教育した方が原価を抑えることが出来て、グループの成績が伸びるという仕組みにしたのですが、グループ制かつ数値の「見える化」をしていると、今まで楽をしていたような人達が、だんだんと浮き彫りになってきてしまいました。

ベテランの数がそこまで多くなかった為、新人への教育体制を敷くという意味でもグループ制を導入していたのですが、そのグループのリーダーが「楽をしていた人達の分まで頑張らなくては」となってしまい、頑張り切れなくなって、ついには退職してしまうということがあったため、現在は制度や集計方法の見直しを図っています。

kintoneを導入してよかったと思う点を教えてください。

三宮様

一番は社員の意識が変わった点です。

kintoneで工数管理をすると、自分自身がどれくらい業務に時間をかけているのかが分かります。そうすることで「効率化」のために、原価を考えながら「この案件はこの人と行こう」などといったことを考えられるようになりました。会社全体の利益を上げるためには新人への教育が必要、ということも分かってきたかと思います。

インタビュアー

そうなのですね。
貴事務所ですと、新卒も含めて年にどのくらいの人数が入社されるのですか?

三宮様

今は年に1人くらいです。工数管理を始める前は離職率が非常に低かったのですが、やはり数字が見える化されるので、なかなか人が定着しにくい部分もあります。ですが、人と事務所のミスマッチは以前より早く判断できるようになったと思います。

結果としては、ちゃんと原価を考えて動ける人が残ってくれるようになったので良かったと思います。

インタビュアー

ありがとうございます。

スタッフの方の意識が変わったと思われる点を、より具体的にお聞かせいただけますか。

三宮様

はい。

基本、測量士は「個人」で動くイメージがあると思います。個人で動くと、自分の仕事は自分がやらなくては、という意識があるので、他人に頼みにくいことや頼みたくないことも多いと思います。しかし、その中で「書類を届ける」や「写真を撮る」等の仕事は自分がしなくても良い仕事は「自分が行くより、その現場の近くに行く人に依頼したほうが効率が良い」という意識が持てるようになりました。

案件の全体のスケジュールはExcelで、また細かなスケジュールはGoogleカレンダーで管理をしていますが、毎朝それぞれがカレンダーを見て業務を始めているので「○○に行くときに××の写真を撮って欲しい」と依頼が出来るようになりましたね。

「自分が行くより頼んだ方が効率が良い」という判断が出来るようになり、複数案件の同時並行で連動して動けるようになると、より利益率も上がります。 さらに弊所では、個人個人が案件を抱えて動くというよりは、1つの案件を細分化して複数人で動いているので「誰が、どこに、誰と行くか」の組み合わせを組み替えていくと、作業効率が劇的に変わるのです。このあたりの組み合わせの意識も、原価や効率を重視して出来るようになってきたと思います。

インタビュアー

「グループで動く組織」になる中で、社内の意識や風土、社員の皆様の雰囲気にも変化はありましたか?

三宮様

そうですね。以前に比べて仲は良くなったと思います。仲良くした方が仕事がしやすいので、麻雀部や競馬部などを作ったり、社員旅行を企画したりしています。社員旅行の参加率は100%なので仲は良い方だなと思います。社内全体としてそのような雰囲気作りをすることで、新人でも先輩に対して仕事をお願いしやすい環境を作っています。

今後、kintoneで実現したいことを教えてください

三宮様

kintoneだけで原価管理までできるようにしたいですね。そうすることで、従業員もより原価に対しての意識が高まり、効率化アップに繋がると思います。

また、メール送信機能を利用して業務報告も自動化したいと思っています。できる業務を増やして、自社の基幹システムにしていきたいですね。

基幹システムになると新しい機能を後付けしていくのは結構簡単なので、本当の基幹システムにするにはどうしていくのか、もう少し作り込みたいと思います。

また、案件ごとだけでなく担当者ごとの工数も出したいと思っています。

最後に、今からデジタル・DX化を進めようとしている企業様に向けてメッセージをお願いします!

三宮様

正直うちもまだデジタル化がほとんど進んでいないので大それたことはお伝えできないのですが、DX化は取り組めるところからやっていくのがいいかなと思います。
これからDX化を進めようとされている皆様と一緒に、私も頑張っていきたいなと思います!

船井総研はサイボウズ®のオフィシャルパートナーです!

船井総研では、コンサルティング会社として中小・中堅企業様をご支援する中で、
kintoneを利用した業務改善も多数行っています。


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